私小説〜桜を見上げるタンポポ

1 :賢治:04/05/11 16:00 ID:jr6EUfZN
その年の桜もまた綺麗だった・・。
いや・・ただ格別に忘れられぬ桜となったからそう想うのかも
知れない。
すべてはあの日から始まったのだから・・・

「私、出て行こうと思うんだけどいいかな・・」
後部座席ではしゃぐ子供達の声をかきわけるように耳にとびこんで来た・・
「出て行くって・・子供達はどうするんだよ」
動揺をはっきり認識する前に即座に投げ返した。
「子供はみんな置いて行こうと思うの」
窓の外を走る桜並木をじっと見つめながら妻が言った・・
「そうか・・・そうだろうな」
努めて感情を押し殺しながらそう答えるのが
精一杯だった・・。
今の自分はどんな顔をしているのだろう・・
心の動揺を抑え、自分の自尊心を守るべく
冷静に会話を続けよう・・そう考えながらハンドルを
握る手に力がギュッと力が入った。
・・・・・三十代半ばで向かえる人生の転機であった。

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